恋の宝石ずっと輝かせて
 不穏が迫っていることも知らず、授業をサボったユキとトイラは楽しむことしか考えられなかった。

「なんだ、ここは?」

 匂いに敏感なトイラは、辺りを嗅いで困惑し、警戒心を露にしている。

「トイラが気に入るかなと思って、ここにしてみたんだけど。一応私の理想のデートスポット、トップ5に入る」

 ユキが連れてきたところは動物園だった。

 何種類もの動物の匂いが漂っていたために、敵か味方か分からず、トイラは不安を抱きそわそわしていた。

 ユキは躊躇するトイラの手を引っ張って、ゲートを潜った。

 トイラが足を踏み入れたとたん、動物園が活気に溢れ、動物達の声が各地から騒がしく聞こえてきた。

 その声を聞くや否やトイラはほっとしたのか顔が晴れやかになっていた。

「俺、なんか歓迎されてるよ」

 照れくさそうに、辺りの様子をみながら、トイラは一つ豹の声で吼えてみた。

 すると益々動物園内は、動物達の声で賑わった。

 有名人にでもなった気分で、 ちやほやされることにいい気でいた。

「トイラ、やめてよ。皆見てるでしょ。ライオンキングじゃあるまいし」

 ユキは顔を赤らめる。

「ライオンキングってなんだよ。俺、ブラックパンサーだから」

 調子に乗ってるトイラの背中を押し、ユキはそそくさと群集から逃げていた。
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