恋の宝石ずっと輝かせて
 トイラの行く先々で、動物の方から興味本位で近づいてくることが多かった。

 トイラに対して何か威厳を感じるのか、スターにでも会ってサインを求めてるようにも見えた。

「やはりトイラは森の守り主になるから、動物たちもわかってるんだ。偉大な力を持つもんね」

 ユキのその言葉は、トイラには重荷だった。

(偉大な力があるのなら、俺は一番最初にお前を救いたいのに)

 思うようにできない苛立ち、そして大蛇の森の守り主の言葉、『今のその気持ちではまだなれぬ』と言われたことが耳に残る。

 トイラはどういう気持ちになれば、森の守り主になれるのか考えていた。

 大蛇の森の守り主が死んでしまったこの時、後継者は自分しかいない。

 考えたこともなかった責任が、急に身に降り注ぐ。

 あまりにもそれは恐れ多く、自分では背負いきれない。

 不安がストレスを引き起こし、トイラは頭を掻きむしった。

「どうしたの、トイラ。まさか蚤?」

「馬鹿! なんでそうなるんだよ」

 トイラがムッとすれば、ユキは面白半分に笑っていた。

「人の気も知らないで」

 だが、何も知らないユキに八つ当たることではない。
 トイラはこの限られたひと時を大切にしたいと思う。

 必ずユキを助け出せる。

 そう信じようと、腹に力をこめていた。
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