恋の宝石ずっと輝かせて
 ──胸騒ぎがする。

 ユキは一目散に走った。

 躓きそうになりながらも、必死でトイラを探した。

 裏山に入った直後、また胸が疼き出した。

 ジークが近くに居る。

 しかしトイラが心配で、自ら危険の場所に足を踏み入れていく。

 胸の痣の疼きはどんどん大きくなり、痛みが増してきたとき、前方にトイラの姿を捉えた。

 トイラは地面に倒れこんで赤く染まった肩を押さえている。

「トイラ!」

 ミカは動けないトイラに木を振り上げ叩きのめそうとしていた。

「止めて、五十嵐さん」

 ユキは思いっきりミカに体当たりすると、二人は勢いで転んで地面に横たわった。

 トイラは激しく息をしてそれを見ていた。

「ユキ、来るな、逃げろ。そいつはジークに操られている。早く逃げるんだ」

「嫌よ、トイラを放って逃げられる訳がない」

 ミカはユキが押し倒した衝撃でどこかで頭を打ったのか、力が尽きたのか、気を失っていた。

 そのときだった、不気味な笑い声が聞こえ、さっとジークがユキの側に現れた。

 ジークの左目は前回トイラに引っかかれた傷がそのまま残っていた。

「やっと、私の出番がきたようだ」

「ジーク!なんて汚い奴。関係のない人間を巻き込むなんて」

 トイラが吼えた。

「関係がないだと、この子はお前を私のように憎んでたようだが。全てはこの子が自分でしたことさ。まあ多少協力してやったけどね」

「くそっ!」

 怒りがトイラの体から湧き出るが、動けない事がより一層悔しくてたまらない。

 ユキの傍に行くことすら困難だった。

< 221 / 360 >

この作品をシェア

pagetop