恋の宝石ずっと輝かせて
 何やら運動場が騒がしくなった。

「人が屋上から吊るされてるぞ」

 その声が各クラスに届くや否や、確認しようと教室の窓にたくさんの顔が集まった。

 それを見た女子の『キャー』という悲鳴まで聞こえてきた。

 トイラとキースも確認するが、顔まで確かめられない。

「落ち着きなさい、みんな」

 担任の村上先生がなだめようとしたとき、教室のドアが大きな音を立てて開いて、誰かが入ってくる。

「村上先生、大変です。このクラスの春日ユキが屋上から吊るされてます」

「何だって!」

 トイラが叫んで立ち上がるや否や、弾丸のごとくすぐに教室から出て行った。

 クラスは一瞬のことに唖然としていた。

 トイラは素早かった。

 一目散に廊下を走りぬけ、階段を何段も一度に飛び越えて駆け上がっていた。

 無我夢中で屋上に立つ。

 屋上の柵の側に柴山が立っていた。

 その柵からはロープがピーンと吊るされている。

 そして柴山の右手には ナイフがきらりと光っていた。

 どのクラスの生徒も、窓から顔を出して上を見ている。

 事件を正確に把握してないクラスは、火事でも起こったかと、一斉に校舎から避難しだす始末だった。

 学校中が大騒ぎで、ぶら下がっているユキを見ていた。

 やがて警察や救急車、消防車までもが集まってくると、その騒ぎは学校内だけでは収まらず、町を巻き込んでの驚天動地の騒ぎとなった。

 キースはすでに教室を出て、運動場で下から見守っていた。

 もしもの時はユキを受け止める覚悟だ。

 全ての企みを知っていた仁もやりきれない思いで、歯を食いしばっている。

 近くに居たキースと目が合うと、逃げるように目を逸らしていた。


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