恋の宝石ずっと輝かせて
 仁は暫く入院することになった。

 あれから病院を後にして、ユキが家に戻ったときは日付はとうの昔に変わっていた。

 寝る時間があまりなく、その日は欠伸をしながら登校する羽目になった。

 二日連続あまり寝ていない。

 かなり疲れているがそれでもユキはどうしても学校に行きたかった。

 やらなければならないことがある。

「逃げちゃだめか」

 その言葉を呟きながら、ユキはマリのことを考えていた。

 ねちねちと言葉で虐められていても、決して手を出されたことはなかった。

 頬をまたそっと撫でる。
 痛かったが、この時になってその痛みは胸に響いた。

 ――あのとき矢鍋さんは私を心配してくれていた。だから抑えられない感情があんな形になったんだと思う。本当に心配してくれてなければそんな感情なんてでてこないよ。

 ユキは体育館に向かっていた。

 そこで朝練が終わったマリを見つける。

 走って来たためにハアハアと息をしながらユキは近づいた。

 以前マリに言われたように、自分の殻を破り飛び込んでみようと思った。

「矢鍋さん、昨日はごめんなさい。心配してくれてたのに、私、馬鹿なことを言って」

「謝るのは私の方よ。叩いてごめん。それに今まで私もネチネチと意地悪して悪かったわ」

 ユキは驚いた。マリが自分に謝った。

 思わずアメリカナイズの行動に出てしまった。

 ユキは思いっきりマリにハグしていた。

「やだ、春日さん、みな見てる」

「いいの、これが私流のやり方。私たちいい友達になれるよね」

「うん」

 マリも恥らうように笑っていた。


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