恋の宝石ずっと輝かせて

 トイラに手を触れられてから、ユキのドキドキがずっと続いてしまった。

 その後、無言が続き、自分がぎこちなくなっている。

 それを悟られているんじゃないかと思うと気が気でなく、またお皿を落としそうになり、ヒヤッとした。

 トイラがそれをがっちりと掴めば、真横にいるトイラの存在をユキは強く感じた。

 洗い物はお皿があと一枚というとき、ユキはこの状況から解放されると思うと同時に、名残惜しくもなってくる。

 トイラは乱暴で冷たいくせに、優しい。

 油断して近づこうとすれば、容赦なく突き放される。

 ユキとトイラには一線が引かれて、トイラはそれ以上ユキが踏み込むのを拒絶しているかのようだ。

 振り回されすぎて、ユキはトイラの傍にいると心乱され疲弊してしまっていた。

 これでは身がもたない。
 リラックスするにはお風呂が一番。

 夕食の片づけが終わった後、風呂に入る事を理由にそそくさとトイラから離れた。

「お風呂入るけど、覗かないでよね」

 捨て台詞のようにユキの口調はきつかった。
 何に対して怒っているのかわからない。

 トイラたちはそんな事絶対しないとわかっていても、ユキも憎まれ口を叩かないと気がすまなかった。

 というより、自分を保てなかった。

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