恋の宝石ずっと輝かせて
 トイラは何も言わずに美しい緑の目をユキに向けた。

 そこには何が宿っているのかわからないが、少し憂いを帯びていたように思えた。

 その目が頭からはなれないまま、ユキは湯船に浸かり、ため息を吐く。

 まだ出会って間もないというのに、ずっと一緒に暮らしているようにも思えてしまう。

 腹が立つのに、心底憎みきれない。
 トイラは変わり者とわかっていても、ユキはもっと違う何かを見ているような気がした。

 また胸が熱を持ったように疼いた。
 ふと視線をそこにむけると、何かがおかしい。

「あれ、これなんだろう」

 ツキノワグマのように模様が浮き上がっていた。

 それはまるで新月から現れる細い三日月のようになっていた。
 大きさにして五百円玉くらいのサイズ。

 気絶したときに胸をぶつけて痣になったのだろうか。

 時々熱を感じて疼くのはそのせいに違いない。

 そんなに気にするものではないと、その時は軽く見ていた。

 改めて温かいお湯に深く体を沈め、頭の中を空っぽにして体の力を抜く。

 リラックス、リラックス。

 いつもは静かであるはずなのに、外の様子が騒がしくなっている。

 また猫の声が聞こえてきた。

 不思議に思い、ユキは湯船から出て風呂場の窓をそっと開けて覗いてみる。

 あの時のように、うじゃうじゃと猫が再び集まっていた。

 その中心にトイラが混じっていたから、余計に驚いた。

 猫はトイラの足元で頭を擦りつけ、次から次へと甘えるように擦り寄っている。

 声を掛けようかと思ったが、自分が丸裸だったのを思い出し、ユキははっとして窓を荒く閉めてしまった。
 
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