恋の宝石ずっと輝かせて
 トイラはキースの肩に腕をまわして支えられ、二階の部屋へ運こばれる。

 ユキもその後を祈る思いでついていく。

 嘘であってほしい、何かの間違いでいてほしいと、 強く強く願っていた。

 トイラはベッドに横たわる。

 うめき声とともに汗が噴出していた。

「ユキ、冷たい水とタオルを」

 キースに指示されて、ユキは即座に階段を駆け下りた。

「トイラ、なんでそんなに純粋な馬鹿なんだ。玉ねぎ入ってるのになんで食ったんだ。玉葱は俺たちには毒だろうが」

「ユキが作ったご飯だったから。ユキをがっかりさせたくなかった。それに致死量は食べてない。これぐらいすぐに治るよ。しかしこんなに即効で強烈だとは俺もさすがに思わなかったぜ」

「本当に馬鹿だな、お前は」

 キースは呆れていた。

 階段をバタバタ上がってくる音が聞こえ、ユキが洗面器に水を入れて部屋に入ってきた。
 悲壮な表情で、今にも泣きそうになっている。

「どうしよう。病院に行った方がいいんじゃないの?」

 ユキはぬれたタオルでトイラの額を必死に拭いている。

 そのユキの手をトイラは優しく掴んだ。

「俺は大丈夫だ。一晩寝たら治る。だから泣くな。さあ、ふたりとも部屋から出て行ってくれないか」

「でも」

 ユキはトイラから離れたくなかった。

「ユキ、行こう。トイラは大丈夫だ」

 キースに肩を押されて、ユキは仕方なく部屋をでる。

 トイラはその間も苦しそうに顔をゆがめていた。
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