恋の宝石ずっと輝かせて
 ここからそんなに遠くないところに、小さな医院がある。

 この町の住民は体の調子が悪くなると誰もがそこを尋ねる。

 ユキも一度風邪で世話になったことがあった。

 気さくな話しやすい先生。小さな田舎町の先生だから、その人に直接頼めば往診に来てくれるかもしれない。

 一心不乱でペダルを漕ぐ。

 ポツポツと立っている街灯が田舎道を照らそうとするが、あまりにも頼りない光で薄暗い。

 点いたり消えたりを繰り返しているものあり、不気味な雰囲気をかもし出していた。

 人通りも全くない、暗い夜道。

 夜道が怖いなんて言ってられないほど、ユキは我を忘れて猛スピードで自転車を飛ばしていた。

 車もあまり通らない寂しい道。田畑が広がるところを通りかかったときだった。

 突然前に人影が立ちはだかった。

「危ない」

 急ブレーキをかけるユキ。

 体が前につんのめると同時に胸に痛みが広がった。

 まるで内側から、幾つも針をつつかれ、その針が体の中から突き抜けようとしているような痛みだった。

 その痛みに耐えかねて立ってられず、バランスを崩し自転車とともにユキは倒れこみ、意識が朦朧とする。

 黒い影がユキに近づくにつれて、そのシルエットが浮かび上がってくる。

 フードつきのワードローブを頭からすっぽりとまとい、顔は暗闇にのまれ、目だけが不気味に光を帯びていた。

「また会ったね。ユキ」
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