思いは海の底に沈む【完】
湊はずっと子猫を手放さずに私のベッドの上で眠っている
子猫は出来る範囲でタオルで拭いた





「湊はアタシが来る前は湊の彼女が務めていたのよ」


湊が付き合ってる彼女…?
だが辻褄が合わない


ホストクラブで豪遊してた彼女はどう見ても30~40代

緑川が軍人をやめたのは4年前

湊はその前から子役をやっている

彼女は15の時から湊に手を出していたことになる

それは犯罪だ




「湊の彼女は、わがまま放題で社長を困らせていたの。それでアタシが追い払ったのよね。
あの女、アタシの事は未だに苦手よ」

『湊の事は…』

「社長も知らないわ。おかしいわよね。
子役で終わらせると思ったら金に味を占めたあの女、湊に俳優業を続けろっていうのよ、続けないなら死んでやる
あのお人好しな湊がやめられる訳ないじゃない
…思春期になれば男女の差は出てくる
あの子は大事な時期に女の子として生きられなかったの

もちろん、湊は不満なんて言わなかったわ
でも、湊は、あの子は、演技が上手くなるほど湊の気持ちが分からなくなってるんじゃないかしら」

『…』

「今のお涙頂戴した?したなら、女王には言わないでよね」

『なぜ止めないんですか?』

「湊が苦しむからよ
湊の世界はあの女が中心で回ってる
…ま、最初っからあんたには期待してないからね」








自分は誰かに感情を持ち込まないと決めていたのに

湊を苦しめた彼女を憎く感じた。明らかに嫉妬している

湊は苦しみ続けているのか





_柊side end_



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