狼を甘くするためのレシピ〜*
 ――どうして、ここに?!

 肩で大きく息をしながら、蘭々は耳にした話を繰り返してみる。

 ケイがプレゼントを贈る相手は二十代後半の女性だという。

 ――もしかしたら自分へのプレゼント?

 蘭々の誕生日は十一月一日、もうすぐだ。

『私、さそり座なの。なんかかっこいいでしょ』
『私ね、もうすぐ誕生日なの。十一月なんだけれど』

 あの夜、そんなことを言った記憶がある。
 そう思うと、居てもたってもいられなかった。

 口紅を落とし大急ぎで着替え、だて眼鏡をかけて、ボーイッシュな朝の蘭々に変身すると店の裏口から飛び出した。

 焦りながらあたりを見渡すと、通りを歩くケイの背中が見える。

 ――よしっ!

 慌てて先回りして、通りの角から顔を出す。。

「あ、あーら、ケイじゃない、偶然ね」
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