狼を甘くするためのレシピ〜*
 途方に暮れながら乗ったタクシーの中でぼんやりとしていると、スマートホンがふいに音を立てた。

 思わずドキッとする。

 そのメロディはアキ用ではなく蘭々への電話。
 わかっているのに、それでもケイ?と思ってしまう自分が情けない。

 でもガッカリはしなくて済んだ。
 今一番話をしたい相手、紗空からの電話だったから。

『蘭々さん、朝からすみません。今日ランチどうですかっ?』

 紗空は、開口一番そう言ってきた。
 願ったり叶ったりの申し出である。

「もちろんオッケーよ。私から誘いたいと思っていたところだもの」

 休憩時間になる午後一時に合わせて、店のすぐ近くのカフェで待ち合わせをした。

 ケイについてなにかわかったかもしれない。
 そう思うと、ランチタイムが待ち遠しかった。
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