狼を甘くするためのレシピ〜*
 ――本名もLaLaと同じ、ララなんだもの。仕方ないじゃない。

 自分の中の良心に向けてそう言い訳をしてみたが、後ろめたさは消えなかった。

 一体いつまで偽名を通すのか。
 昨日も、最後だと言い聞かせながら会った。

 でも、今の気持ちは――。

『いい子にしてたら、次はこの部屋の鍵を渡す』

 甘い声と甘いキスを思い出し、痺れるように心が震える。

 切なくって、胸が苦しくなる。

 ――なんで今朝渡さないのよ、あのバカ男。

 思い切り悪態をつきながら、蘭々は深いため息をついた。

 ――私もう、ケイに会いたくなっている?

「はぁ……」

「蘭々さん、大丈夫ですか?」

「え?」

「もしかしたら、体調でも悪いのかと思って、立て続けにため息が」

「あ、ごめんなさい。大丈夫よ、大丈夫。ほら、元気」
< 166 / 277 >

この作品をシェア

pagetop