狼を甘くするためのレシピ〜*
 蘭々が悶々として、過去の恋人たちを思い出しながら休憩時間を待っていた頃、紗空は既に約束のカフェにいた。

 居ても立っても居られない気持ちだったのは紗空も同じで、しっかりと時間休をとって早めに来たのである。
 そして、ドアベルが鳴る度に入り口に目を向けていた。

 ――一刻も早く、蘭々さんに伝えなくちゃ。

 紗空は蘭々からこう聞いている。

『実はね紗空ちゃん。女同志の内緒の話なんだけど、私ね、最近ちょっと気になる人がいて、今その人に誘われているんだけど、でも彼のこと、何も知らないのよ。
 一緒に偵察してくれる?まずは時間を過ぎても本当に待っているのか。それを確認したいの』

 心酔している蘭々の願いとなれば、全力で応援する以外の選択はない。

『私にできる事なら何なりと!』
 もちろん紗空は力強く快諾した。

 蘭々はその男について、多くは語らなかった。

 あくまでも“気になる人”である。
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