狼を甘くするためのレシピ〜*
4.煮ても焼いても食えない男
「ありがとうございました」
ゆっくりと、お客様に失礼のないよう充分なだけ時間をとって頭を下げた。
それから顔をあげると、取引先の客はにっこりと目を細める。
「では。今度、ディナーでもいかがですか? なんて誘ったら失礼かな」
言い終えた彼の口元に浮かぶのは、自信。
自己評価高めかもしれないが、そうなるのも仕方ないかもしれない。
イケメンと言えなくもない風貌であるし、ホテル王と言われる父を持つ彼は御曹司だ。
歳は三十代の後半。
穏やかそうな笑みを浮かべてはいるが、瞳の奥は冷たく光っている。
――冷血な俺様キャラね。
そう思いながら、椿月子は目を細めてフッと微笑んだ。
「実は私、やきもちやきの恋人がいるんです。すみません」
想像できない答えだったのか。
一瞬固まった客は、間をおいてハハッと乾いた声で笑う。
「そうですか。では、出来上がりを楽しみにしています」
「ご足労いただいて、ありがとうございました」
車に乗り込む客の背中に向かって、嘘ですよーと心で呟いてみる。
ゆっくりと、お客様に失礼のないよう充分なだけ時間をとって頭を下げた。
それから顔をあげると、取引先の客はにっこりと目を細める。
「では。今度、ディナーでもいかがですか? なんて誘ったら失礼かな」
言い終えた彼の口元に浮かぶのは、自信。
自己評価高めかもしれないが、そうなるのも仕方ないかもしれない。
イケメンと言えなくもない風貌であるし、ホテル王と言われる父を持つ彼は御曹司だ。
歳は三十代の後半。
穏やかそうな笑みを浮かべてはいるが、瞳の奥は冷たく光っている。
――冷血な俺様キャラね。
そう思いながら、椿月子は目を細めてフッと微笑んだ。
「実は私、やきもちやきの恋人がいるんです。すみません」
想像できない答えだったのか。
一瞬固まった客は、間をおいてハハッと乾いた声で笑う。
「そうですか。では、出来上がりを楽しみにしています」
「ご足労いただいて、ありがとうございました」
車に乗り込む客の背中に向かって、嘘ですよーと心で呟いてみる。