狼を甘くするためのレシピ〜*
「はい。そのふたりのイメージです」

「悪くはないけど、グッと胸に来るものがないわね」

 森はこの、女性上司の感覚的な評価をとても大切に思っている。

 自分自身の感性を磨く努力を怠っているわけではないが、女性ならではの勘の良さというものがあることを信じているし、これまでも彼女のアドバイスに助けられてきた。

「繊細さとか?」

「そうね、マロンにはもっと繊細な音があってもいいと思うわ」

「ですよね、やっぱり。もう少し考えてみます。じゃあ次いいですか」

 いくつかそんなことを繰り返すうち、ふと森が視線を止めた。

 廊下に面した自動扉が開く。

 月子もジッと見ている。

  入ってきたのはひとりの男性。

 彼は入って来るなり、ある社員に目を留め、まっすぐにその社員の元へ歩いて行く。
 そして、声をかけた。

 どちらもラフな服装なので一見しただけではわからないが、ふたりの内ひとりはここ株式会社Vdreamの社員、そしてもうひとりは社長、源径生だ。
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