狼を甘くするためのレシピ〜*
 彼にしては珍しく、源社長は眉間に皺を寄せている。

「西さん、叱られてますね」

「何をやらかしたの?」

「もう十日くらい家に帰ってないんですよ。夕べもここに泊まったんでしょう」

「え、まだ帰ってなかったの? だって忙しかったのも先週で終わったはずでしょう?」

 森は西の代わりに叱られたように、眉をさげて肩をすくめた。

「西さんは好きなんですよね、ここが」

「しょうがないわね」

 源社長の小言は聞こえなくても想像がついた。

 不潔にするな、シャワーを浴びろ。
 仮眠室を独占するな、ここはお前の家じゃない。
 大方そんなところだろう。

 自由を許しているとはいってもルールはある。周りに迷惑をかけるなよ、というのが社長である源径生の口癖だ。
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