狼を甘くするためのレシピ〜*
 そんなところも尊敬できるし、心から素敵な人だとは思っているが。
 どこまでも、食えない男だ。

 ――あ。
 ふと脳裏に浮かんだのは、彼が見つめていた季節外れのファッション誌。

 ――もしかすると、社長が見ていたのは、モデル?

 大写しになっていたモデルは、つい最近引退したという噂のLaLaだった。

 彼女は艶めいた唇を薄く開けて、紙面の向こうから惑わせる眼差しを向けていた。もしかすると彼はああいった女性が好みなのだろうか?

 そのまま月子は、何も考えずに聞いてみた。
「社長って、LaLaのファンなんですか?」

「なんだよ、いきなり」

 ギョッとしたように径生は振り返る。
 それはそうだろう、いきなりの質問なのだから。

「だって、さっきジッと見ていましたよね」

 合点がいったのだろう。
 ああ、と軽く頷いた径生は、ホッとしたようにフッと笑う。

「いい女だなぁー、と思って見てたのさ」
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