狼を甘くするためのレシピ〜*
「社長、かっこいいシャツですね」
 背中に向けて言ってみた。

「そっか?」

 振り返った彼は、まんざらでもなさそうに、ニッと白い歯を見せた。

「作ったぞ、鶏のトマト煮」

「どうでした? 簡単だったでしょ」

「ああ、簡単だし、美味かった。ワインによく合ったよ」

「それはよかった」

 ――女ができましたか? その人と食べたんですね? 社長。

 フフフ、と心の中で笑う。
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