狼を甘くするためのレシピ〜*
 月子にとって径生は、職場の社長という側面を持つ、恋焦がれる偶像である。

 あこがれであり崇拝する対象だ。

 彼が偶像であることをよくよく理解している彼女は、社長である源径生をリスペクトすることはあっても、彼に触れたいとは思っていなかった。

 どんなに想っても、願っても、決して届かない夢のような存在。というよりも届いてはいけない存在。
 それこそが彼女にとっての萌えの境地なのである。

 というわけで、径生に恋人が出来たからといって嫉妬は芽生えないが、相手がどんな女性なのかは非常に気になる案件だった。

 似合う相手でなければ、受け入れることはできない。

 ――さて、どんな女性だろう。
 それ相応の人ですか?
 納得できる相手でないと、社長がよくても許しませんよ?

 相応しくない相手なら、うーん。

 滅茶苦茶にしてやろうかな。

 ふと、そんな邪悪な誘惑が、月子の心に渦巻いた。
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