狼を甘くするためのレシピ〜*
 ***

 『コルヌイエ』の奥、休憩室に入ると、蘭々はスマートホンを取り出した。

『今日から五日間、仕事で長崎に行くことになった。戻ったら会おうな。 ケイ』

 これでこのメッセージを読むのは何度目だろう。

 穴が開くほどスマートホンを見つめ、何度読み返したところで何も変わらないケイからのメッセージをまた読み返した。

 出張は恐らく、急に決まったことなのだろう。
 この前会った時、彼は何も言っていなかったのだから。

 蘭々はぼんやりと溜息をつき、アキ用のスマートホンをテーブルの上に置く。

 メッセージが送られてきたのは今朝早いうち。
 蘭々がまだベッドの中にいる時間だった。

 早く返事を送らなきゃと思ってはいるが、いざとなるとどう返したらいいものかと、彼女は迷っていた。
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