狼を甘くするためのレシピ〜*
 今思う気持ちを正直に言うならば――。

 五日も会えないなんて、寂しいわ。
 早く会いたい……。
 ずっと一緒にいたいの、私も連れて行って。

 ――く、苦しい。
 心の中だけで言ってみただけなのに、うっかり胸が苦しくなって。

 そして、悲しくなった。

 今朝別れたばかりなのに、もう寂しくて仕方がないとはどういうことだろう?

 眩暈がしそうになり、額に手をあてる。

 ――なにをやっているのよ、私。
 ブルブルと左右に首を振り、背筋を伸ばした。

 そういえば、またネックレスを貰いそびれたことを思い出す。

 ――あの男は、私にネックレスをくれる気があるの? ないの?
 腹が立つやら、切ないやらのため息をついた時だった。

 あらためて目を落としたスマートホンの、小さなポケットの膨らみに目がとまる。
 中に入っているのはケイがくれたマンションの合鍵。
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