狼を甘くするためのレシピ〜*

「なんだか褒めてばっかりじゃないか」と洸が鈴木を睨んだ。

「蘭々、騙されるんじゃないぞ。能ある鷹は爪を隠すって言うだろう? でもあいつの場合は本当に爪なんかないんだよ。で、爪はどうした?って聞くと、あ、忘れた。やべーって言う、そういう男だからな」

 蘭々と鈴木はアハハと笑う。

 その後も次々たとえ話を出して。洸が径生をけなしていく。

 いつしか笑い過ぎで、涙が出た。

 洸がこんな風に誰かをけなす時は、その人物をとても気に入っているということだ。

 けなせばけなすほど、『蘭々、安心したらいい。あいつはいい奴だから』、そう言われているような気がして、涙がとまらなかった。
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