狼を甘くするためのレシピ〜*
 ***


 次の日の夜、蘭々は久しぶりにパーティに行った。

 気分的にはそんな状態ではないが、前もって出席と伝えてあったこともある。

 引退を決めたから少しずつ断りはじめ、最近ではこういった席に参加することはほとんどなかった。でも、今回はお世話になった知人の還暦祝いのパーティということもあり、挨拶がてら参加をすることにした。

 その知人は某アパレルのオーナー。
 こじんまりとしたパーティだと聞いていたし、行けば誰かしら知り合いはいる。

 そう思って誰にも連絡をとらず、会場のホテルにはタクシーで行った。

 案の定元モデル仲間が何人かいたし、楽しいパーディだった。
 ただ一つ問題があるとすれば、参加者の中に元彼がいたことだった。

「蘭々、久しぶり。引退したこと、直接君から聞けなかったのは寂しいよ」

 蘭々は彼を見つめたまま。冷ややかに口元だけで笑みを浮かべ首を傾げた。

「君の引退を祝わせてさせてくれないか。この後でもどう?」

「無理よ」

「なあ、蘭々。僕は本当に後悔してる。お願いだよ」

「何度も言ったでしょう。もう完全に終わっているのよ。まだわからないの?」

 立ち去ろうとすると腕を掴まれた。
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