狼を甘くするためのレシピ〜*
 相変わらずラフな服装で入ってきた社長こと径生は、月子に呼ばれて歩いてくる。
 そして月子と森の間にあるビーズソファ―に腰を下した。

「社長の分ですよ。卵サンド。コーヒーもまだ冷めてないと思います」

「サンキュー」

「どうでした? 木戸さん、仕事できそうです?」

「ああ」と頷いて胸ポケットから取り出したのはUSBメモリー。径生はそれを月子の前に置いた。

「食事も管理されてるからな、入院してむしろ健康そうだ。予定より早く仕上がるかもって言ってたぞ」

「まったくもぉ。褒めていいんだか貶していいんだか」

「褒めてあげましょうよ、一応骨折してるんですから」

「お前も、なんだその一応って」

 笑いながら、径生はサンドイッチにかぶりつく。

 切れた唇が刺激をうけたのだろう。
 彼はちょっと痛そうな顔をして、傷口に親指を当てた。

 テーブルの下からボックスティッシュを取り出した月子は、径生の前に置く。

「サンキュー」
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