狼を甘くするためのレシピ〜*
「うそです」

「なんだ。うそなのか」

 ――嘘だってわかっているだろうに、なんなんだそれは。
 白々しいと言わんばかりの目で睨みながら、月子はやれやれとため息をつく。

「社長、今度の乙女ゲームのイベントでコスプレお願いしますね」

「へ? なに言ってんだ?」

「私を巻き込んだ罪の償いですよ。甲冑つけてもらいますから」

「やだよ」

「やじゃないでしょ。私だって町娘のコスプレするんですから。あ、森くんはお小姓ね」

「え?! 僕は関係ないじゃないですか」

「なに言ってるんですか、ふたりとも。この業界にいるくせに生まれ持っているそのキャラクターを生かさないでどうするんですか」

「まあ確かに森は、森蘭丸って感じだな。森なだけに」

 アハハと笑いながら思う。
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