狼を甘くするためのレシピ〜*
 ***

 今から十数年前、高校生の時。
 径生は、街角で他校の学生とケンカになった。

 なにが原因でケンカになったのかは、覚えていない。
 ボコボコになるまで殴り合っても勝敗が付かなくて、しまいにはお互いの血だらけの顔を見て、笑い転げた。

 相手は御曹司が通う青扇学園の氷室仁だった。

 そのまま仁に誘われて家に行き、氷室家のメイドに手当をしてもらう。

 都内の一等地にある大きな屋敷だった。
 敷地の広さにも家の大きさにも感心したし、本物のメイドを見たのも初めてだった。

『青扇の氷室ってお前だったんだなあー。どうりで強えーと思った』

『ふん。そりゃどーも』

『なあ、この写真、真ん中にいる子ってあのモデルのLaLaか?』

『ああ、友達だからな』

『いいなあー、こんなに綺麗な子と一緒に勉強できるなら、俺、青扇に行きゃよかった。あ、でも金持ちじゃねえから無理か』

 ゲラゲラと笑い合った。

 ――あれは、十七歳の夏だ。

 そのLaLaが、今目の前でワインを飲んでいる。
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