狼を甘くするためのレシピ〜*
「あ、今笑ったでしょ」

 結局パーティ会場を抜け出して、ふたりはケイのマンションに来た。

「いやさ、お前ほんとに俺でいいのかなあと思ってね。あ、今更ダメって言っても遅いけどな」

「なによそれ。たとえばどんな男だと似合うと思ったわけ?」

「そーだなあー、石油王とか、天才物理学者とか?」

「なんでそうなるのよ、意味わかんない。だいたいあなたなんか合鍵渋ったくせによく言うわ」

「あれは、なんて言うか、ほら、恋の駆け引き?」

 思わず吹き出して、笑いながらケイの頬を引っ張ると、そのまま抱き寄せられた。

 うっとりするような甘いキス。

 軽トラに乗って現れた狼は、キスがとても上手い。

 それだけ経験があるのだろうと、そんな見えない過去にも嫉妬を覚える自分に、ぜんぜんダメじゃん、と蘭々は心でため息をつく。

「ネクタイ、してくれたんだ」

 首元で緩めてあるネクタイは、蘭々がプレゼントしたネクタイだった。
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