狼を甘くするためのレシピ〜*
「記念に撮っておくか」
 そう言って、仁はスマートホンを手に取った。

「モデル最後の撮影ね」
 他人事のようにそう言って微笑む彼女に「一緒に撮ろうぜ」と、仁は体を寄せる。

 レンズに向かう仁に真似て、蘭々も親指を立てウインクをした。
「アハハ、いいね~」

 スマートホンの画面に、おどけたふたりの笑顔が映る。

「じゃ、今度は私のスマホで」とバッグからスマートホンを取り出した蘭々は、何かを思い立ったようにピタリと手を止めて、クルッと仁を振り返った。

「仁、ほんとうに、今、彼女はいないのよね?」

「ん? ああ、いないよ」

 片方の眉をひそめて、蘭々が疑わしそうに仁を睨むには理由がある。

 彼女が仁の恋人から敵意の眼差しを向けられたことは、一度や二度じゃない。
 その度に、心の中で、“違うのよ!仁とはただの友達なのよ!”と言い訳をしてきた。

「ならいいけど、恋人ができたらお願いだからちゃんと言ってよね。仁の彼女に疑われるようなことは、絶対にしたくないんだから。絶対によ」

 ゴメンゴメンと軽く笑う仁を睨み、蘭々はため息をつく。
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