狼を甘くするためのレシピ〜*
 蘭々が近づくにしたがって、ひとりふたりと彼女たちが振り返る。

「LaLa」と呼ばれて、ふと思う。

 自分は蘭々であり、ずっとLaLaなのだ。引退しても変わらない。

「久しぶりです、LaLaさん」

「ほんと久しぶり、まだ二か月なのに遠く感じるわ。みんなが眩しい」

「何言ってるんですか。相変わらず綺麗ですよ」

 見え透いたお世辞の奥で、みなぎる自信が瞳をキラリと光らせる彼女は、蘭々が引退を決めたあと、事務所が最も推している看板モデルだ。

 持って生まれたその美しさと裕福さもあるだろうが、彼女は苦労をしたことがないという。これまでずっと、自分が望む通りの道を楽しみながら進んできたらしい。

 ――でも、それで大丈夫なのだろうか?

 他人事ながら、少し心配になる。
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