狼を甘くするためのレシピ〜*
 友人との会話を終えた衣夢が蘭々に耳打ちする。

「で、どうだったのよ」

「――忘れさせて」
 そう言うと、蘭々は美しい目元をどんよりと曇らせたて、肩を落とす。

「ちょっと、一体何があったのよ。気になるじゃない」

 衣夢は椅子をそっと寄せ、披露宴などそっちのけでこそこそと話し始めた。

「例の軽トラの彼と、ちょっとね」

「おお」

 蘭々はかいつまんで説明した。

 悩みは深く、思い出す度に心に影を落とすのに、口にしてみるとあっけないものだった。

 アハハと声を殺して笑った衣夢は、「要するに」と言葉を続けた。

「一夜限りのセック」
「やめてよ、せめて“恋”って言って」
 思わず言葉を遮って言い直す。

「だって本当じゃない。もう会わないんでしょ、彼とは」

「会わないわよ。でも、たとえその場限りでも、あれは“恋”だったの。真剣な」
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