狼を甘くするためのレシピ〜*
「ははぁー。そう言い聞かせてるわけだ」

 衣夢を睨みながら、渋々と同意する。
 彼女の言う通り、自分にそう言い聞かせているからだ。

 いくらケイが楽しい男だったからと言って気を許し過ぎた。

 心を開くまではよかったものの、体まで預けるなんて、あってはならない。

 ひたすら猛省するしかないが、でもあれが一瞬の恋だとすれば、それはそれでいい思い出だったのではないか。今は、そう思うしかしなかった。

 全ては過去で、彼との間に未来はないからこそ割り切れるということもある。
 強いて言うならば旅の恥は搔き捨て、ということだ。

「だけど蘭々、その彼がどこの誰なのかは突き止めておいたほうがいいわよ」

「どうしてよ。もう二度と会わないのに?」

「だって、相手がわかってさえいれば予防線を張れるじゃない。万が一彼のほうが先にあなたを突き止めたらどうすの」

「えっ。やだもうー、怖いこと言わないでよ」
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