狼を甘くするためのレシピ〜*
「連絡先は聞いてないの?」

 ――それは……。

 実はケイから携帯の電話番号を渡されていた。

 後で冷静になってから思い出したのだけれど、バッグの中にそれはあった。

 二件目に行ったバー。
 話が盛り上がるうちにケイが『そのうち、また飲もうぜ』と言った。

 そして連絡先を交換しようと彼はスマートホンを取り出した。

 蘭々はスマートホンをホテルに置いてきているので、ごめん忘れたと答えた。

 酔ってはいても、身元を隠すことだけはしっかりと忘れなかったのだ。それだけは自分を褒めてあげたかった。

『番号も覚えていない。私バカなの』

 今思えば本当に大馬鹿だが、そう誤魔化すと、ケイはコースターに自分の携帯番号をサラサラと書いて、渡してくれたのだった。

「電話番号はわかる。彼が番号を書いたコースターがバッグに入ってた」

「じゃあ。かけてみなさいって」

「え、イヤよ。どこからかけるのよ。非表示でかけたって番号聞かれたらどうするの」

 衣夢は「あのね」と大きくため息をつく。
 そしてインターネットから格安スマートホンの契約などを蘭々に教えた。
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