狼を甘くするためのレシピ〜*
「必要なくなったら、解約して、さようなら。アキという女性は消える。ね?心配ないでしょ」

「衣夢、すごいわ!」

「何言ってんのよ。あなたが世間知らずなの」

 その後もその話で盛り上がっているうちに披露宴は終わった。


 パラパラと人が掃けていく。

 途中、あちこちで簡単な挨拶を済ませながら、蘭々や衣夢も会場を出た。

 話をしながら、二階から階段を降りていく披露宴の美しき参加者たち。
 華やかなその流れの中に、衣夢と蘭々のふたりもいる。

 ロビーにいたホテルの客たちは、そんな彼女たちを見上げていた。ある者は瞳を輝かせ、ある者は茫然と見惚れながら。

 でも、注目を浴びている彼女たちは、そんなことには慣れている。
 視線を気にすることもなく、というよりも無意識のうちにスターとしての自覚を忘れず、一歩一歩と、階段を降りてゆく。

自分は美しい。その自覚こそが彼女たちを更に輝く者にしていくのだろう。

その姿はプロモーションビデオのワンシーンのように美しかった。
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