狼を甘くするためのレシピ〜*
「なるほど、ワンナイトにはいい感じだわ」

 蘭々が男のほうに顔を向けないで済むよう、衣夢がさりげなく蘭々の隣に移動して、ふたりは紛れこむように華やかな集団の中に身を隠した

 思い出話として楽しむこととはわけが違う。
 相手が目の前に現れたとなると、友人として真面目に対応を考えなければいけない。冗談では済まされないからだ。

 衣夢がそっと囁いた。

「さっきの話だけど、蘭々、あなたは本当にもう二度と彼には会いたくないのね?」

「もちろんよっ」

 困り果てたように唇を噛む蘭々を見つめながら、小さく領いた衣夢は、ため息をつく。

「それなら蘭々、やっぱり、このまま連絡をとらない方がいいかもしれないわ」

「え?」
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