グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~
振り向いたシルビアの瞳は、とても綺麗な赤色で悲しみが溢れていた。
その目を見ると、マロンディスの胸が痛くなった。
どうして、そんな悲しい目をしているんだ?
そう尋ねたかったマロンディスだが、言葉にならなかった。
「皇子様・・・。私が、怒っていると本気で思われているのですか? 」
しなやかな優しい声で、シルビアが訪ねた。
「いや・・・そうじゃないけど・・・」
フッと、一息ついてシルビアはもう一度マロンディスを見た。
「私は、この6年。一度も、全てに対して後悔したことはありません。私が選んだ事は、間違っていないと信じています・・・」
「本当に? 」
「はい。それ故に、娘の事はずっと探しておりました。まさか、皇子様の元にいたとは、驚きましたが。これも、運命だったのでしょうね」
悲しげな瞳のまま、シルビアはそっと微笑んだ。
「皇子様。そろそろ、手をお放し下さい。ここは、仮にもグリーンピアト城でございます。ディアンナ様もいらっしゃいますので・・・」
そう言われて、マロンディスは少し名残惜しそうに、シルビアの手を離した。
「・・・本日は、これで帰ります。お約束の、5日後にまた参ります」
そっと会釈をして、シルビアはそのまま帰ろうとした。
が・・・
バタバタと足音が近づいてきて、シルビアはハッと振り向いた。
シルビアが振り向いた瞬間・・・
「っ・・・」
鋭い尖った物が、シルビアの腕に刺さった。
「フン! 」
痛みで膝をつくシルビアを、不敵に笑って見ているディアンナがいた。
「シルビア! しっかりしろ! 」
真っ青になり、マロンディスはシルビアを支えた。
シルビアの肩には、花瓶の大きな破片が刺さっている。
そして血がドクドクと、滴り落ちている。
「大丈夫です・・・私は構いませんから・・・」
「何言っているんだ! 」
マロンディスはいつにない、怒りが溢れる目でディアンナを睨みつけた。
「お前! なにしやがるんだ! 」
「何って、邪魔な女を退治しようとしただけよ! 」
「ふざけるな! 今すぐここから消えろ! 」
「どうして? 悪いのは、その女よ! いきなり現れてなによ! 」
「うるさい! 誰か! 誰か来てくれ! 」