グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~
近づいてくるマロンディスの足音に、鼓動は早くなるばかりで・・・。
でも、どこか壁を作ってしまうシルビア。
フイッと、顔を背けて窓の外に目をやった。
「大丈夫か? もう、怪我は痛まないか? 」
尋ねられても、シルビアは返事をしなかった。
何かを言ってしまうと、嬉しくて泣き出してしまいそうで・・・。
「ごめんな、怪我させてしまって。俺が傍にいたのに」
そんなに優しくしないで。
心の中でシルビアは言った。
「シルビア・・・」
スーッと、マロンディスの手が伸びてきて、シルビアは背を向けた。
今触れられたらだめ!
まだ否定している自分がいるから・・・。
ぎゅっと唇を噛みしめて、シルビアは肩を竦めた。
「シルビア・・・ごめん・・・」
背中越しに優しい声が聞こえて、ふわりと、暖かい温もりがシルビアを包み込んでくれた。
ちょっとぎこちないけど、とっても優しくて暖かいマロンディスの腕が、シルビアを後ろから抱きしめてくれた。
「ごめんな。6年も、1人で背負わせて。本当に、ごめん・・・」
どうして謝るの?
悪いのはきっと私だ。
一方的に記憶を消したのは、私だから。
何かを言わなくちゃならないのに、シルビアは何も言えない・・・。
言葉が喉に張り付いて、うまく出てこなかった。
「でも有難う。子供を産んでくれて・・・。俺、夢だったんだ。心から愛する人と、子供を育ててゆく事。・・・俺は、ちょっと複雑な血筋だから。自分の子供には、そんな思いさせたくないってずっと思っていた。何も思い出せなかったけど、パティーナを見ていると幸せな気持ちになれて安心できたんだ」