グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~

「落ち着いたか? 」

 シルビアの呼吸が穏やかになったのを見て、マロンディスが訪ねた。

 こくりと頷くシルビア。


「もう、過去の事はどうでもいいよ。お前も、ちゃんと考えてやったことだ。俺は、パティーナが居てくれた。それだけで嬉しいから。でも、辛かったのはお前だよな? お腹を痛めて産んだ子供が、いなくなったんだから」

「・・・しばらくは・・・動けませんでした。・・・ずっと、皇子様に申し訳なく思っていました。・・・せっかく授けて下さった、大切な子供がいなくなってしまって・・・手掛かりもなくて・・・」

「ずっと、自分を責めていたのか? 」

「だって・・・」

「パティーナが居なくなったのは、きっとお前のせいじゃない。パティーナが、自分で決めて来たことだと俺は思う。現に、パティーナがここに来た事だって、偶然じゃないはずだ。必然だったんだと思う。こうして、お前と巡り会えるようにパティーナがちゃんと、導いてくれていたんだ。だからも、自分を責めなくていい。こうしてまた、会えたんだ。素直に喜べばいいんだよ」

 
 この人は優しすぎるくらい・・・。

 沢山傷ついているのに、どうしてこんなに優しくなれるのだろう? 

 
 ギュッと、シルビアはマロンディスにしがみついた。

 その手は震えていて、その震えはマロンディスにも伝わってきた。


「もう1人で背負うな。俺は6年前と、気持ち変わっていないから」

 シルビアはゆっくりと顔を上げて、マロンディスを見つめた。

 目にいっぱいの涙をためて、赤い瞳が揺れている・・・。


「でも、貴方はグリーンピアトの大切な皇子様です。沢山の人に愛されていて、貴方のご両親や親族の方が、とても大切に育ててくれていたエネルギーを感じました。だからあの時・・・地底に、引き止めてはいけないと思って・・・」
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