グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~
 伝わってくるマロンディスの鼓動が、とても心地よくて。

 その鼓動が「愛している」と言ってくれているように感じた。

 激しく強い痛みは、次第に快楽に変わってゆく・・・

 心だけじゃなく、体も喜んでいる。 

 これが・・・愛というものなのだろうか? 

 
 初めてマロンディスを見た時、今でに感じたことがない感情が込みあがった。

 怪我をしてる! 助けなきゃ! 

 ただ、それだけを考えて助けたシルビアに、マロンディスは自分の着ているダウンジャケットを羽織らせてくれた。

 その優しさがずっと忘れられなかった。

 地上の皇子様だから・・・そう思って、込みあがってくる想いに蓋をしていたシルビア。

 でも、マロンディスは手を握ってくれたり、抱きしめてくれたり・・・

 その度にドキドキして、想いが蓋を開けそうになって怖かった。

 ミネバから「彼の記憶を消しなさい」と言われたときは、とうとうこの日が来たのだと覚悟した。
 
 本当は記憶を消したりしたくない・・・

 それがシルビアの本心だった。

 でも、このまま地底にマロンディスを置いておくことはできない。

 きっと地上では、マロンディスを心配している家族がいる。
 
 でも・・・
 
 記憶を消すために来たのに、こんな事になるとは想定外だった。
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