グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~
「マロンディス。1つだけ、答えてほしいの」

 ん? と、マロンディスはジュリアルを見た。

「貴方、南グリーンピアトで怪我をした時。本当に、ディアンナに助けてもらったの? 」

 そう尋ねられると、マロンディスは虚ろな目のまま少し考え込んだ。


 6年前。

 散策中に転落して・・・

 意識を失って・・・


 病院にいた・・・


 しばらくして現れたディアンナに、見覚えががなく全く思い出せなかった。

(怪我をして、記憶が消えているようなの。大丈夫よ、一緒に思い出せるから)

 そう言って笑いかけてくるディアンナに、マロンディスは全く納得できなかった。
 
 しかし何もかもが空白だったマロンディスは、ディアンナの言うままに動かされてしまった。

(私は、貴方とずっと学生の頃から交際していたのよ。結婚しようって約束してたじゃない)

 そう言われても何も実感がないマロンディス。

(記憶がなくても大丈夫よ。私ね、赤ちゃんができたの。貴方と私の子供よ)

 子供? ・・・

 ディアンナはマロンディスの手を取って、自分のお腹に手を当てさせた。

 そこは膨らんでいるのかいないのか分からない程で、ディアンナはひたすらマロンディスに笑いかけてきた。

 
 そのままグリーンピアトに戻ってきて、ディアンナと結婚したマロンディス。

 翌年に産まれたパティーナを見ると、マロンディスの内側で何か熱い思いが込みあがってきた。

 だが・・・それが何なのか今でも判らないままだった。
 
  
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