グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~
そっと目を伏せて、俯くミネバに、ランフルクはそっと近づき手を重ねた。
とても暖かい温もりを感じて、ミネバはハッと驚いた。
「そんなにご自分を、責めなくていいですよ。ジックニーも、貴女の気持ちは分かっているはずです」
そう言われると心が軽くなる・・・。
ミネバの心にあった重い扉が、少しだけ開いたような気がした。
「・・・あんなに小さな子に、辛い思いをさせてしまった事に。自分が許せないいままでした。私は、早くに夫を亡くしてずっと1人で地底を守ってきました。・・・地底を守る事ばかりで、ジックニーがどんな思いでいるのかまで、考える事が出来なかったのです」
「そうでしたか。大変ですよね、お1人で地底を守る事は。僕も、1人で国を守っていた時がありましたので、お気持ちは良くわかります」
ゆっくりと、ミネバはランフルクを見た。
目と目が合うと、ランフルクはそっと微笑んだ。
その微笑みを見ると、ミネバはとても安らいだ気持ちになれた。
「もういいじゃないですか、1人で頑張らなくても。貴女は1人じゃないです。シルビアさんもジックニーもいるじゃないですか。亡くなったご主人も、貴女が1人で頑張りすぎている事を、とても心配していますよ」
ふと、ミネバの目が潤んだ。
そんな顔を見られたくなく、ミネバはそっと顔を背けた。
「あの、教えてもらえませんか? どうして、地底に地上の人を近づけないようにしているのですか? 記憶を消す事までして、護らなくてはならないのですか? 」
「・・・はるか昔は、地底も地上も分け隔てなく仲良く暮らしていたと聞いています。恐竜達も地上で穏やかに暮らしていたのですが。いつの日か、地上の人は恐竜を見せ物にするようになり、無残に殺してしまう事も多くなり、それが嫌になった人達が恐竜を守るために、地底に国を作ったと聞いています。深い霧で、判らないように隠して。恐竜達が安全に暮らせるように、そして、亡くなった人の魂が穏やかに光の世界へ返れるようにと。地上の人を近づけないようになったのです」