グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~
「もう、1人で頑張らなくてもいいじゃないですか」

「・・・でも・・・」

「亡くなったご主人も、同じことを言っていますよ。自分の幸せを1番に考えて、自分に優しくして良いよって言っていますよ」


 自分に優しく・・・

 そんなことを、ミネバは考えたことがなかった事に気づいた。

 とにかく地底を守らなくては・・・

 それだけしか考えていなかったのだ。


「僕に、手伝わせてもらえませんか? 」

「え? 」

 思わず驚いて、ミネバはランフルクを見た。

「貴女の重い荷物を、僕にも分けもらえませんか? 僕が、魂の声が聞けたり、死者の声が聞けることは。僕にとって必要なことだから、その力をもって産まれてきたのだと思います。1人より2人じゃないですか」

「何を言われるのですか? 貴方は地上の人ですよ」

「そうですよ。でも、同じ人間じゃないですか。それに、この広い屋敷に1人でいるのはもう嫌なんです。こんな短い時間ですが、貴女と話していると、とても心地よいのです。僕があと、どのくらい生きられるかはわかりませんが。まだまだ、元気でいられる自信はありますよ」

 
 なんなの? この展開は・・・

 ただ謝罪に来ただけなのに・・・

 どうしてこんなに、優しくされるのだろう? 


「・・・お優しいお言葉ですが。・・・貴方の奥様に、申し訳ありません・・・」

 ミネバは心とは逆の事を言ってしまった。

「ん? もしかして、壁の写真を見たのですか? 」

「はい。とても素敵な奥様で・・・」

「ええ。僕には、もったいないくらいの女性でしたよ。魔族の血を引いていたので、攻撃魔法も治癒魔法も使える人でした。でも三年前に、寿命が尽きてしまって亡くなりました。・・・僕は2度も、妻とは死別しているんです」

 え? 

 驚いたミネバの赤い瞳が、悲し気に揺れた・・・。
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