グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~
その頃。
マロンディス達はお城にいた。
パティーナの葬儀もひと段落して、そろそろ地底へ戻ろうと決めていた。
だが、ティミスになかなかそのことを言い出せないままでいた。
ティミスの父ジャディスは、その後回復して元気を取り戻していた。
ジャディスとずっと親しくしている、療養施設の看護師が毎日お見舞いに来てくれているようだ。
ジャディスより10歳年下の女性で、リンヌと言う可愛らしい看護師。
丸顔で目がぱっちりしていて、愛嬌が良く優しい看護師として周りからも慕われている。
155センチの小柄で、とってもキュートな女性である。
ジャディスとは、療養施設に入る前に出会っていた。
リンヌが看護学生の頃、ちょっとした事件があり、その事件を担当したのがジャディスだった。
偶然にも療養施設で再会して、そこからとても親しくなったようだ。
ティミスも支えてくれる女性がいて、とても安心している。
中庭。
花壇の花を見ているジックニーがいる。
パティーナが亡くなってから、ジックニーはずっと悲しそうな顔をしている。
自分が生き残った事を、ずっと責めているようだ。
「あれ? 誰だ? お前」
不意に後ろから声がして、ジックニーは振り向いた。
振り向いた先には、ちょと俺様な風潮の少年がいた。
顔立ちはティミスとよく似た目をしていて、顔の輪郭はジュリアルに似ている。
栗色の髪がサラサラで、どことなくマロンディスにも似ている感じがする。
背丈は160センチ前後位いで、スラッとしている。
ラフなグリーンのシャツに茶色いズボンに茶系のスニーカー。
カバンを片手に持っているところを見ると、学校帰りのようである。
「ん? お前、もしかして兄貴の子? 」
兄貴?
ジックニーが目をパチクリさせていると、少年は歩み寄ってきた。
「わぁっ。近くで見ると、すげぇ綺麗な目だなぁ。でも、お前兄貴とそっくりだな」
ちょっと口調が悪い少年に、ジックニーは少し警戒した目を向けた。
「あ、悪い悪い。俺、アディールって言うんだ」
「アディール・・・? もしかして、皇子様ですか? 」
「そっ、そのもしかしてってヤツ」
そう言って、ニッと笑うアディールはジュリアルとそっくりな顔をしている。
この人が皇子様?
とてもそんな風には見えないけど・・・。
ジックニーはそう思った。