グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~

「お前、名前は? 」

「ジックニーです」

「へぇー。良い名前じゃん。で、なんでそんな顔してんだ? 」

 ぬーっと顔を近づけてくるアディールに、ジックニーは思わず身を引いた。

「ん? ・・・そっか・・・」

 ふいっと、悲しげな眼をしてアディールは空を見上げた。

「・・・大切な妹が、死んじゃったのか・・・」


 え? なんで分かったの?

 ジックニーが驚いていると、アディールはそっと微笑みかけた。


「お前はとっても妹想いなんだな。俺は、兄弟いないからさっ。その辺の事は、よく判らない。でも、1つだけ言えることはある」


 微笑んでいたアディールの目が、少しだけ厳しくなった。

 その目を見ると、ジックニーはドキッとした。


「お前がいつまでもクヨクヨしてっと、妹はいつまでもお前の傍にいて次にいけないままだ。お前は今生きている! 生きている人間には、それぞれの役割があり、生きている意味もある。お前が立ち止まっている間も、時間はどんどん進んでいるし、周りだってどんどん変わっているのは間違いない」

 
 口調は軽く聞こえるが、アディールの言っていることはとてもジックニーの胸に響いてくる。

 何だろう・・・まるで、本当の兄貴に言われているかのような説得力がある。


 ジックニーが不思議そうに、アディールを見ていると。

 ふわりと、優しい手がジックニーの頭の上に置かれた。


「お前が立ち止まっていて、死んじまった妹が喜ぶと思うのか? 」

 頭の上に置かれている手が、とても暖かく、スーッとジックニーの体に入ってくるのが判った。


「安心しろ。妹は、お前の中で生き続けている。・・・お前達って、もしかして双子だったのか? 」

「え? どうして? 」

「魂から感じるエネルギーが、普通の人より強いからさっ」

「魂を感じるの? 」

「まぁなっ。俺の、母ちゃんの遺伝みたいだぜっ」

 母ちゃん? ・・・

 皇子様なのに、母ちゃんって・・・。


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