グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~
「母が、地上で産んであげなさいと言って。父の同僚であった、国立病院のケイン先生に頼んでくれました」

「そうだったのか。なんとなくケイン先生と親しそうに見えたのは、前から知っていたからなんだな? 」

「はい。パティーナの情報を教えてくれていたのも、ケイン先生でした」


 マロンディスはもう一度母子手帳を見た。

 コンコン。

「お父さん、お母さん。入ってもいい? 」

 
 ジックニーの声に、シルビアはドアを開けた。

「どうしたの? ジックニー」

「別に・・・どうもしないよ。・・・早く地底に帰ったほうがいいと思うから、どうなのかな? って思って」

「そうね。みんな心配しているものね」

「・・・うん・・・」

 ふと、ジックニーはマロンディスが母子手帳を手にしているのに気付いた。

「それ・・・母子手帳? 」

「ああ、そうだよ。お前と、パティーナが産まれる前の事と、産まれた時の事が、沢山書かれている。とっても大切な手帳だ」

「お父さん。・・・僕、産まれてきて本当に良かった? 喜んでくれるの? 」

「当り前じゃないか。・・・」

 涙でいっぱいの目で、マロンディスはジックニーを見て、そっと微笑んだ。

「愛している人が、命がけで産んでくれた子供だ。喜び以上だよ」

「お父さん・・・」

 不安そうな目をしていたジックニーの目から、涙が溢れてきた。

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