幸福論
1人で陸釣りに来た日。



たまたま見つけた、今となっては見慣れた姿。


一つに簡単に束ねただけの髪に
化粧っ気のない横顔。


懐かしい姿やった。
話しかけるとふわっと返ってくる笑顔。


久しぶりに会ったまこちゃんは
何も変わってなくて、
隣におると落ち着く心地がした。


聞くと彼女もここに来るのは久しぶりみたいで。


撮影のために色を変えた俺の髪型を見て、
いい色だね、なんて褒めてくれる。


ロクマルを初めて釣った日には気付いてた。
この子は俺がアイドルやってことを知らん。


だからこそ自然体で話せたし、
変にカッコつけずにいれた。


仕事を隠すことにももちろん胸は痛んだけど、
それよりも話したことで
彼女との関係が崩れることが怖かった。



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