幸福論
テレビを見るのかと聞けばそうでもない。
好きな芸能人がいるわけでもない。


いつかバレることなんて
分かりきっているのに、
簡単に嘘ついてしまう自分がいた、


ただもうちょっとだけ、
彼女が気付くまでの間だけでも
時間を延ばしたかった。





「そういや最近は彼氏とは来てへんの?」

「......彼氏?誰のこと?」

「...え!嘘やん!!あの、ほら、あれ、
男性と一緒に来てなかったっけ、、」

「...あ!もしかしてこの子?」









まだ話せる間柄やなかった初めて会った日、
彼女の隣におった男の子。






「あ、そうそうこの子!」

「これ弟だよ。」





彼女が見せてくれた画面に映る
満面の笑顔の男の子は、
彼氏やと思ってたけど実は弟やった。


勘違いしてたんと、
彼氏おらんのやって気持ちが
同時に押し寄せる。




心のどっかで
この子には彼氏がおる。


そう思ってたから
気付かんフリをしてたんかもしれん。


彼氏がおらんって知った今、
俺を止めるものは何もなくて。
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