幸福論
あの日、志乃に釣りに行かないでと言われた日から、
紺さんの話はしていない。


もちろん、昨日湖に行ったことだって
今日の夜に会うことだって彼女は知らない。


なんとなく言いにくかった。


しばらくすると
入り口付近が騒がしくなってきた。






「うわ!小森のでっかいポスターがあるー!」

「しー!うるさい!俺らだけちゃうんやぞ!」

「ごめんやんか!ちょ、テンション上がってきた!」






小森さんの知り合いなのだろうか。
やけに響く関西弁を話す人たちが開場してきた。


彼らに書いてもらう受付票を用意しようとした時、
笹上さんに呼ばれた。






「私立っとくから大丈夫だよ。」





受付は志乃に任せ、
急いで裏に行くと笹上さんと佐伯さんが
並んで立っていた。





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