幸福論
真っ暗な水面に真っ暗な空。
浮かんでるのは月だけで。


冷たく当たる風が
ごちゃごちゃの頭を冷やしてくれるよう。


お気に入りのスポットに座って
ぼーっとしようと思った時に
誰かが立ち上がるのが見えた。


仕事終わりで来たから夜ももう遅くて。
こんな時間に誰かがおるなんて
思いもしーひんから


なんや変なことでも考えてるんちゃうか、
なんて不謹慎なことも頭をよぎる。


その後ろ姿はどうやら女性のよう。
立ち上がって少し深呼吸する人は
長い髪がすごい綺麗な人やった。



今こっちに来られたら向こうも気まずいやろうし
顔合わせる前に帰らなって
足を止めた時にその女の人が振り返ってしまった。


ギョッとするっていう言葉がぴったりやったと思う。
少し俯きがちなその人は
何を隠そう、好きで好きでたまらん、
俺の頭を離れてくれへん、まこちゃんやったんやから。
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