幸福論
もうすぐ彼女が戻って来てしまう。


咄嗟にそう思った私は
止める龍の声も混乱する斗くんの声も全部無視して
訳も話さず部屋を飛び出した。


龍に相談した方がいいのかな?
斗くんに聞いてみた方がいいのかな?


思うことはたくさんあった。
でも、一番は彼女から紺野さんを
遠ざけることだと思ったから。


それから休みの度に彼女を誘い、
頻繁に連絡を取り
彼女ができるだけ一人になる時間を減らした。


そしたら釣りに行くことも
紺野さんに会うことも自然に無くなるって
思ったから。


だからあの日、
臨時休暇をもらったまこから
釣りに行ったと聞いたときは本当に後悔した。


休みもなく働いていた彼女。
1日の休みぐらいは家で休むだろうと
連絡しなかった。


そんな貴重なたった1日を
釣りに使うなんて
思わなかったから。
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